一歩一歩進んでいく

●GoogleとYahoo!が法廷で戦っている

 インターネット業界の時間概念ではかなり昔のことになってしまうけれど、2002年4月のことを思い出してみよう。この時期、CNETなど米国のITメディアでは、OvertureがGoogleを相手取って、検索エンジン特許をめぐる訴訟を起こしたことが話題になっていた。

 訴訟の中身は、次のようなものだ。Overtureはキーワード広告と呼ばれるビジネスモデルを構築し、検索エンジン業界各社に先んじてサービスを提供している。このビジネスモデルについて、Overtureは2件の米国国内特許を取得しているという。広告主からの料金に応じて、検索結果の上位にURLを表示するという「Pay For Performance」と、その表示場所をオークション方式で決める「bid for placement」の2つである。

 ところが2002年2月になって、GoogleはOvertureのキーワード広告によく似たサービス「AdWords Select」をスタートさせた。このサービスが、Overtureの特許を侵害していると同社は主張したのである。

 提訴から2年が経った。この間、OvertureはYahoo!に買収された。裁判はGoogleとYahoo!の戦いになったのである。そして法廷での争いは、そろそろ最終段階に入りつつあるようだ。

 Googleは2003年の売り上げが10億ドルに達しているが、その95%がAdWordsなどの広告による収入だとされている。もしGoogleがこの裁判で敗訴するようなことになれば、同社は巨額の損害賠償を支払わなければならない。そしてYahoo!からキーワード広告特許の提供を受けるか、そうでなければ検索エンジンの広告モデルを根底から改める必要がある。

 OvertureはGoogleが故意に、そしてあからさまな手口で同社の特許を侵害していると主張している。そして米国での裁判の常套的なあり方だが、Googleに対してでき得る限りのダメージを与えようと狙っている。もしGoogleが敗訴すると、同社の株価が受ける影響は甚大なものとなるだろう。しかしもちろん、同社はこの件についてはまったくコメントしていない。同社は新規株式公開(IPO)の直前で、沈黙を保たなければいけない時期にあるからだ。しかし驚くべきことに、いつもは騒がしいアメリカのメディアも、この件については沈黙しているように見える。現在のところ、アメリカ国内ではほとんど報道されていないのだ。この件は国家機密なのだろうか?

 Googleは広告収入一辺倒の構造を改めようとしている、という報道もある。Taipei Timesの「Google、広告依存の低下を狙う」という記事によると、「全体の4%以外の残らずすべてが広告収入になっているというGoogleの集中的な収益構造は、アナリストたちから若干の注目を引いている」という。しかし、「広告が財務の土台になるという構造は今後も続くだろうが、Googleは収益源の多様化を進めようとしているようだ」という。

 一方でOvertureは、キーワード広告の特許を申請するのが遅かったという問題を指摘されている。アメリカの特許法では、特許は発明されてから1年以内に申請しなければならないと定められているが、法廷でGoogle側は「Overtureは特許申請する1年以上も前からキーワード広告を行なっていた」と指摘している。もしこの主張が認められれば、Overtureの訴えは却下される可能性もある。

 いずれにせよ、この件は今後も注目しておく必要があるだろう。判決はどうなるのだろうか。


Internet watchより全て引用しています。著作権はInternet watch及びその記事の基となったところへ帰属します