一歩一歩進んでいく

コメントスパムにみんなで協力する

 僕は子供時代をデトロイトで過ごし、そのころはしょっちゅうテレビで「セサミストリート」を観ていた。いま思い返せば、この番組の最大のテーマは、「人と協力することの重要性」だったように思う。

 たとえばセサミストリートで語られる典型的なメッセージは、次のようなものだ。「友達と一緒に汗を流そう。あるいは友達じゃなくっても構わない。そうやって共に頑張れば、同じ目的に立ち向かうことの楽しみがわかるはず。」

 そこで検索エンジンの話に戻ろう。

 最近、検索企業がお互いに協力し、ハイパーリンクを生成するタグである<a href>の新たな属性を決めるという画期的なできごとがあった。属性(attribute)というのはご存じのように、HTMLタグの中に記述して、そのタグがどのようにレンダリングされたり、表示されるかを規定する情報である。

 新しい属性は、このタグにrel="nofollow"と記述するものだ。今後、GoogleやYST、MSN Searchはリンク先のタグにrel="nofollow"という属性を見つけたら、ページの評価を行なわず、ランクの対象外にすることになった。ブログのコメント欄などにこの属性が付加されていると、いくらこのコメント欄にスパム書き込みを行なっても、スパマーがページランクを増やすことはできなくなったのである。これはブログのコメントスパムには、ある程度は有効な対応策だと考えられている。

 Googleなど検索エンジンの側は、コメントやトラックバックなど、自動的にリンクが生成される場所に実装することをサイト管理者に勧めている。

 たとえばこのlivejournalというブログサービスは、nofollowを実装している。ユーザーが作成した「友達リスト」に名前が載っている人がブログのコメント欄に誰かがリンクを書き込んでもnofollow属性は作成されないが、友達リストにない人物がコメントを書き込んだ場合は、nofollowになる。つまり、見知らぬ誰かがコメントスパムを行なおうとしても、無効になってしまうわけだ。

 経験豊かなサイト管理者だったら、これまでにもさまざまな方法を使ってこうしたコメントスパムの防御策を実行してきているだろう。たとえば header に、<meta name="robots" content="noindex, nofollow">というタグを使うという方法もある。このタグを使っておけば、検索エンジンのロボットはサイトのリンク先を追跡せず、インデックスも作成しない。あるいはHTMLのbody部分に、リンクを追われないようにするJavaScriptを埋め込んでおくという方法もある。

 今やブログはWebの世界で最大の成長セグメントとなりつつある。nofollow属性はブログのコメントスパムを完全に排除できるわけではないが、長い目で見れば、コメントスパム対策以外にもさまざまな副次効果もありそうだ。

 たとえば、nofollow属性を使うことでサイト管理者の側は、自分のWebのどの部分に価値を持たせるかを自分で決めることができるようになる。あるいはブログスパムがなくなることで、検索エンジンやブログの広告がさらに増えていくという結果になることもあり得る。Googleが数年前から展開しているAdWordsやAdSenseのような検索広告の市場がさらに拡大していく可能性があるということだ。

 余談になるが、Googleが最近、街中の看板広告といった昔ながらの宣伝戦略をアメリカ国内で開始したという噂が出ている。これまでネット上の口コミに宣伝のほとんどを頼ってきた同社としては、かなり思い切った方針転換になるのかもしれない。たぶんこれは、同社が上場して公開企業になったこととどこかで関係しているのだろう。

 話を戻せば、検索エンジン大手3社はいずれもnofollow属性について、正式コメントを発表している。リンクは次の通り。

 いずれのコメントもブログ上で発表されているというのが、何とも凄い。でももっと凄いのはやはり、大手3社が協力してブログのコメントスパムの追放を行なおうとしていることだ。

 ブッシュ政権の閣僚人たちも、これを見習って「セサミストリート」式に「みんなで協力しよう」を実践してくれればいいんだけどね。ビッグバードに閣僚会議に出席してもらった方が、いいかもしれないな。



Internet watchより全て引用しています。著作権はInternet watch及びその記事の基となったところへ帰属します