一歩一歩進んでいく
●支配か、それとも絶滅か

 この壮絶な戦いが開始されたきっかけは、はっきりしている。マイクロソフトが「Longhorn」とコードネームで呼ばれているWindows次期バージョンで、Web検索機能とデスクトップ検索機能を統合させると表明したからだ。

 このアイデアは素晴らしい。どんなプログラム上でも、検索フォームを開けばWeb検索と同じようなかたちでパソコンの中身を検索できてしまうという機能を可能にするからだ。そしてマイクロソフトは、この機能を実現すれば、検索エンジン業界の中でも支配的な地位を得られるようになるのではないかと考えたのである。もちろん、GoogleとYahoo!をがーんと打ち負かして、ということだ。

 そしてGoogleとYahoo!は、Windowsのデスクトップを何とか征服できないかと虎視眈々と狙っている。マイクロソフトがユーザーをロックインしてしまわないうちに、何とか攻め立てなければならない。

 そんな状況の中で、マイクロソフトがいま抱えている問題は、同社の従来型デスクトップ検索の評判がものすごく悪いことだ。Windowsマシンで特定のファイルを探したり、Outlookのメールボックスの中から必要なメールを探そうと思っても、簡単にはできない。WindowsやOutlookやWordの検索エンジンは、そのファイルがどこのフォルダにあるのか教えろとか、どんな種類のファイルを探そうとしているのか教えろとか、あれこれ情報を要求してくるのだ。

 一方、GoogleやCopernicなどの企業は、Windowsデスクトップの検索エンジンをさらに進化させ、一般的なWeb検索と同じような使い勝手を実現することが可能だということを証明して見せた。検索フォームにキーワードを入れ、エンターキーを押せば、ほら見てご覧!である。適切なファイル名やメールタイトルがリストアップされた検索結果を、Web検索であろうとデスクトップ検索であろうと、きちんと表示してくれる。もしマイクロソフトが自社のデスクトップ検索のツールを完成しきれないうちに、こうした企業のツールがデファクトスタンダードの座を奪うことになれば、彼らがマイクロソフトに打ち勝つチャンスは十分にある。

 もちろんマイクロソフトも、このことは十分すぎるぐらいよく理解している。彼らは今、GoogleやYahoo!と勝負できるようなWeb検索を開発しつつある。また最近、Outlookのメールボックスを効果的に検索できる秀逸なアドオンプログラムを開発しているLookout社も買収している。

 Yahoo!もまた、この「トータル検索戦争」に参戦している。同社は最近、Staba Labsという企業を買収した。Stata Labsはメールの本文と添付ファイルを検索できるアプリケーション「Bloomba」を販売している企業。そしてYahoo!はこの企業を買収したものの、Bloombaの販売を続ける意志はないようで、Stata社の技術者たちはYahoo!検索エンジン部門に組み込まれつつあるようだ。要するに、Bloombaの技術をデスクトップ検索の開発に生かそうとしているのである。Stata社の買収は、デスクトップ検索の開発のための大きなステップとして位置づけられているようだ。

 2006年にリリースされる予定のWindowsの次期バージョンには、トータル検索ソリューションは組み込まれないという話もある。要するに、マイクロソフトはWeb検索とメール検索、ファイル検索という3種類の方法を統合するのに苦労しているということらしい。その一方で、同社はデスクトップ検索の試験的なバージョンをこの秋にリリースするということもアナウンスしている。だから完成はまだ遠いとはいえ、徐々にゴールに近づきつつあるというのは間違いないようだ。




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