一歩一歩進んでいく
●Googleがblogの会社を買収した本当の理由

先日、僕は“注釈付きWeb”(Annotated Web)についての記事を読んだ。注釈付きWebをご存じだろうか? 人々が、さまざまなネットコンテンツについて論評を加えているWebサイトのことだ。そのもっとも一般的な例は“blog”かな。blogはご存じのように“Web Log”(Web日記)の略語。狭い意味では、さまざまなニュースサイトの記事を引用しながら、その記事について論評を加えている個人サイトのことを意味する。日本でも最近、流行しつつあるようだ。

 さて、僕が昨日読んだその記事は、Googleの共同創設者であるラリー・ページ(Larry Page)のこんな言葉を引用していた。

 「僕たちが作ろうと考えたのは、検索エンジンではなかった。作ろうとしたのは、注釈を扱うランキングの仕組みだったんだ。どこかのWebページを読み終えた後、クリックすると誰かがそのページについて書いた気の利いたコメントを見ることができるといういう感じのもの。でもそういうシステムを作ろうとすると、問題がひとつ生じてくる。読者の側は、誰のどのコメントを読めばいいのかという問題だ。その問題を解決するためには、コメントを含んだWebページに対して、信用のできる評価付けをしなくてはいけない。それがページランクというわけだ。……そして僕らはすぐに、このページランクというシステムは注釈付けに使うより、検索エンジンに使う方が有効であることに気づいたんだ」

 この記事は「AlwaysOn」というサイトで読むことができる。AlwaysOnは、blog運営者たちのコミュニティだ。彼らのサイトによると、メンバーは“インターネットによって作られる世界的なデジタルネットワークの技術はこれからも新たに生まれ続ける”と信じている会社役員や起業家、投資家、研究者、政府関係者たちで構成。編集方針は“起業や投資のチャンスを見つけると同時に、新しいネットワークの世界が生む社会的・政治的チャレンジについて議論すること”だという。とても前向きな考え方を持つサイトだ。

 そして最近、彼らはGoogleの会長兼CEOであるエリック・シュミット(Eric Schmidt)にインタビューした。この記事がきわめて興味深い。記事の前半は、Googleの独特な会社運営スタイルについて。そして最近、彼らが手がけた企業買収と、その独自の運営スタイルが買収にどのような影響をもたらしたかについて、シュミットが答えている。

 インタビューによると、Googleは一般企業とはかなり異なったスタイルで会社が運営されているようだ。会社の戦略にしろ、製品展開にしろ、意志決定を行なうのは2人の創業者か、もしくはごく少数のメンバーで構成された技術チームだ。こうしたスタイルを取ることによって、決定はきわめてスピーディーに行なわれるというわけだ。シュミットは「このスタイルがわが社の最大の強み」だと言っている。

 そのスピーディーな決定が如実に現れたのが、Pyra Labsの買収だ。Googleの創設者のひとりのセルゲイ・ブリン(Sergey Brin)は、誰がこのインターネットの中でオピニオンリーダーとしての役割を果たしているかを、ツールの部分にターゲットを絞って徹底的にリサーチした。それはGoogleがこれまでずっと関心を持ってきた分野でもある。そして達した結論は、明快だった。「Blogger」というblog運営サービスを提供しているPyra Labsがそうだ、ということ。Googleはすぐに買収担当チームを作り、Pyra Labsの連中に会いに行って「買収したいんだけど、どう?」と訊ねた。それで連中はGoogleの技術チームのメンバーと会い、買収は素直に決まった。Googleにとっては、これは日常業務に近い気軽な仕事だったというわけだ。

 Googleは、Bloggerのようなセルフパブリッシング媒体が、人間のコミュニケーションを大きく変える次の新たな波と考えているようだ。過去にそうした大波はいくつもあった。電子メールはその先駆けだったし、電子メールを拡張してリアルタイム性を持たせたインスタントメッセージもそのひとつだった。Pyra Labsを買収したことで、彼らはこの新しい媒体に力を入れていくことになるのだろう。


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