一歩一歩進んでいく
●政治が検索エンジンをゆがめることもある

 政治的な背景をちょっと見てみようか。

 ご存じのように、大手薬品メーカーは自社の薬品の販売チャネルを広げるために、政府に対してロビー活動を行ない、多くのカネと時間をかけている。そしてアメリカでは販売チャネルは、インターネットに集中しつつある。もっとも効果的に販売できるからだ。そして薬品メーカーのロビイストたちは、インターネットでの薬物販売を規制しようと躍起になっているのだ。「有害な処方薬から消費者を守らなければならない」というのがお題目だけど、本音は「自分たちの販売チャネルを守るため」というところだろう。

 ロビイストたちはインターネットの販売システムを調べ上げ、無許可の薬品販売サイトがクレジットカード決済を利用できないようにした。カード会社に圧力をかけたのだ。同じようなことは以前、ポルノやオンラインカジノのサイトでも行なわれているよね。さらに彼らは、検索エンジンの広告からも薬品販売サイトを排除するように圧力をかけた。

 その外形的事実だけを見れば、薬品メーカーのロビイストたちがやっていることはそんなに悪いことには見えないかもしれない。無許可の薬品販売? そんな危険なことはやめさせた方がいいじゃないか、って。でもアメリカに関して言えば、たいへん重要な問題がひとつある。4,300万人もの国民が、健康保険に加入していないということだ。こうした未加入者は、できるだけ安い値段で薬品を手に入れたい。それは悪いことだろうか? たとえばアメリカ北部に住んでいる人たちは、車を走らせて国境を越え、カナダで薬を買った方がずっと安くすむことを知っている。たとえばキューバに住んでいる人たちにとっては、アメリカ製の薬を手に入れるのはものすごく難しい。たとえは悪いけれど、麻薬のディーラーがよく言うように、供給を制限したって麻薬の需要が減らないっていうのと同じことだ。

 僕はこうしたアメリカのシステムが、いいの悪いのとあげつらおうとしているわけではない。言いたいのは、政治やビジネスがいかにして検索エンジンに影響しうるか、という話だ。そしてこの話は、現在の状況の中ではきわめてリアリティは高いと思う。インターネットの商業主義的なスピリットと、表現の自由のスピリットは、しょっちゅう軋轢を生んでいて、あなたのWebマーケティングの戦略にも影響を与えかねない。

 だって無許可薬品販売の業者は広告型検索エンジンから閉め出されて、大量のスパムをまき散らす方法に走ってしまってるんだから。おかげで毎日、僕のメール受信箱はスパムでいっぱいだ。



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